炊飯器でローストビーフ|70度・保温何分?生焼けを防ぐ目安

炊飯器でローストビーフ|70度・保温何分?生焼けを防ぐ目安

クリスマス、お正月、誕生日。食卓の主役にローストビーフを置きたいけれど、家にオーブンがない──そんなとき頼りになるのが、家にある炊飯器の「保温」機能です。

気がかりなのは、やっぱり「生焼け」や「食中毒」。
実は「保温30分」と書かれた通りに作っても、肉の重さや炊飯器の保温温度によっては、中心まで火が通りきらないことがあります。同じ手順でも仕上がりが変わってしまうのは、このためです。

そこでこの記事では、うまくいく作り方に共通する原則を出発点に、「何℃で何分保温すればいいのか」を肉の重量・厚みごとの目安として整理しました。
あわせて、切ったあとに生焼けかどうかを見分けるチェックリストまで、家庭で安全に作るためのポイントをまとめています。

 

目次

 

炊飯器ローストビーフを成功させる、4つの共通原則

炊飯器でローストビーフを作る方法は、料理研究家のレシピやテレビの料理コーナー、家庭向けのレシピサイトでくり返し紹介されてきました。並べてみると、表現や時間設定は違っても押さえているポイントは共通しています。

まずは、家庭で再現するときに外してはいけない4つの原則を整理しましょう。


料理研究家のレシピで知られる、湯温70℃・保温45分

家政婦としても活動する料理研究家・タサン志麻さんが提案している炊飯器ローストビーフは、湯温70℃・保温45分が目安です。

仕上がりはミディアムレアで、保温が終わった後にさらに30分ほど休ませて肉汁を落ち着かせるのがポイント。牛塊肉600gで4人分が目安で、300gで作る場合は調味料も半量にします。

 

テレビの料理コーナーで紹介された、湯温70℃前後の低温調理

テレビの料理コーナーでも、炊飯器の保温機能が70℃前後を保つことを利用した低温調理が紹介されています。

特別な道具は不要で、ジッパー付き保存袋と熱湯さえあれば家庭の炊飯器で再現できるのが特徴です。


レシピサイトの定番、熱湯1L+冷水200mlで湯温約73℃

家庭向けのレシピサイトでも、炊飯器ローストビーフのレシピは数多く投稿されています。中でも定番なのが、熱湯1Lに冷水200mlを足して湯温を約73℃に調整し、保温40分で仕上げる方法です。

熱湯と冷水を組み合わせるだけで湯温が一定の範囲に収まるため、温度計がなくても再現しやすい配合です。


3つに共通する、4つの共通点

これらの方法を並べてみると、次の4つを必ず押さえていることがわかります。

  • 表面を強火で全面焼き
    香ばしさを出すと同時に、表面の細菌を焼ききる
  • 常温に戻してから加熱
    冷えたまま入れると、中心まで火が届きにくい
  • 湯温70〜73℃をキープ
    高すぎると固くなり、低すぎると生焼けになる
  • 保温後にしっかり休ませる
    余熱で中心まで火を入れ、肉汁を落ち着かせる

時間設定は少しずつ違っても、この4つはすべてに共通しています。
「テレビで見たから」「ランキング1位だから」と一つの方法を鵜呑みにするより、この4点さえ外さなければ、炊飯器でもおいしく安全に仕上がります。

 

なぜ「レシピ通り」でも失敗するのか|炊飯器ローストビーフの3つの落とし穴

ところが、丁寧に作ったつもりでも「切ったら中が真っ赤な生焼けで、あわてて再加熱した」という声は少なくありません。原因は、炊飯器ならではの特性にありました。

落とし穴1|同じ「保温」でも、炊飯器によって温度が10℃以上違う

炊飯器の保温温度は、メーカーや機種によって60℃前後から74℃前後まで、約14℃の幅があります。レシピが想定する温度と、自宅の炊飯器の温度が同じとはかぎりません。

自宅の炊飯器の保温温度が低めの60℃前後だと、レシピに書かれた時間どおり保温しても中心温度が安全圏に届かないことがあります。保温温度は取扱説明書で確認できるので、一度見ておくと安心です。


落とし穴2|肉が大きいほど、書かれた時間では足りない

温度が足りていても、肉の大きさで必要な時間は変わります。300g以下の薄めの肉なら30〜40分で中心まで届きますが、500gを超える厚い肉では、同じ時間では火が通りきりません。

「保温30分でやったら中が真っ赤だった」という失敗談の多くは、肉の重さに対して時間が短すぎたケースです。

決まった時間を守るより、肉の重量と厚みに合わせて調整するのが正解。具体的な目安は次の章にまとめましたのであわせてご確認ください。


落とし穴3|冷蔵庫から出したての冷えた肉をそのまま入れている

冷蔵庫から出したばかりの肉は、中心温度が5℃前後です。これをそのまま炊飯器に入れると、湯温が一気に下がり、中心まで温度が届くのに余計な時間がかかります。

調理を始める前に、肉を常温に1〜2時間置いて中心温度を上げておくと、保温時間内に安全圏まで届きやすくなりますよ。

 

重量・厚みごとの保温時間の目安

落とし穴2でふれた「重量と厚みに合わせた時間調整」を、具体的な数字に落とし込んだ目安です。

肉の重量

厚みの目安

保温時間の目安

200〜300g

3〜5cm

35〜45分

300〜400g

5〜6cm

45〜60分

400〜500g

6〜7cm

60〜70分

500g以上

7cm以上

70分〜(厚みで追加)

 

機種の保温温度が低め(60℃台)の場合は、上の目安より10〜15分長めに見ておくと安心です。心配なときは、料理用の温度計で中心温度を測ると確実に判断できますよ。

 

家庭で安全に作る、炊飯器ローストビーフの基本手順

ここまでのポイントを踏まえた、家庭で安全に作れる炊飯器ローストビーフの手順をご紹介します。

■材料(牛もも肉300g/2〜3人分)

  • 牛もも肉ブロック 300g(厚さ5〜7cm)
  • 塩 小さじ1/2(肉重量の1%目安)
  • 黒こしょう 適量
  • ニンニク(すりおろし) 1かけ分
  • サラダ油 大さじ1
  • 熱湯 1L
  • 水 500ml


■必要なもの

  • 炊飯器(5合炊き以上を推奨)
  • ジッパー付き保存袋(ポリエチレン製・耐熱100℃のもの)
  • フライパン
  • 耐熱皿(肉が浮かないように押さえる用)
  • 料理用温度計

料理用温度計を揃えるのは少し手間に感じるかもしれませんが、中心温度を測れば仕上がりの判断に迷わなくなります。安全に作ることを優先したい方は、ぜひ用意しておきたい道具です。


■手順

①肉を冷蔵庫から出して、常温に1〜2時間置きます。
厚さがある場合は2時間が目安。中心温度を上げておくことが安全への近道です。

②全面に塩・こしょう・すりおろしニンニクをすり込みます。
香ばしい焼き色をつけるために、塩は気持ち多めに。

③フライパンに油をひき、強火で全面に焼き色をつけます。
各面30秒〜1分、合計2〜3分が目安です。
このとき表面の細菌を焼ききることが、後の食中毒対策にもつながります。

④粗熱を取り、ジッパー付き保存袋に入れて空気を抜きながら密閉します。
空気が残ると熱の伝わりにムラが出ます。水を張ったボウルに浸して空気を押し出すと、しっかり密閉できますよ。

⑤炊飯器に熱湯1Lと水500mlを入れ、保温モードをONにします(湯温約73℃)。
水で割らずに熱湯だけを注ぐと、機種によっては80℃を超えて肉が固くなることがあります。

⑥肉を保存袋ごと投入し、耐熱皿で押さえて浮かないようにします。蓋を閉じて、保温で40〜60分加熱します。
加熱時間は、先ほどの「重量・厚みごとの保温時間の目安」を参照して調整してください。加熱中はできるだけ蓋を開けないこと。蓋を開けると湯温が下がります。

⑦取り出して、袋に入れたまま常温で30〜40分休ませます。
余熱でじんわり中心まで火が入っていきます。時間に余裕があれば、冷蔵庫で一晩寝かせるとさらに肉汁が落ち着きます。

⑧繊維に逆らって薄切りにします。
切り方ひとつで食感が変わります。

 

「生焼け」と「ロゼ」を見分けるチェックリスト

炊飯器で作ったローストビーフは、切ってみるまで仕上がりが分からず、中の赤みを見て「生焼けかも」と不安になる方も少なくありません。

でも、中心がほんのりピンク色なのは、必ずしも生焼けではありません。適切に火が入ったローストビーフの断面は、ワインのロゼを思わせる淡いピンク色になります。フランス語で「バラ色」を意味する「ロゼ」と呼ばれ、生とは違って中心まで適度に火が入った、やわらかくジューシーな状態を指します。

この淡いピンク色のもとになっているのは、肉に含まれるミオグロビンというたんぱく質です。切ったときに出る赤い肉汁も血ではなく、このミオグロビンが溶け出したもの。

とはいえ、本当に加熱不足の「生焼け」とは見分けるポイントがあります。次の表で確認してみてください。

状態

判定

切り口がロゼ色で、肉汁が透明

◎正常

切り口が赤く、肉汁も赤い/半透明でツヤツヤしている

△生焼けの可能性あり

切り口に透明感がなく、繊維のラインがはっきり見える

◎火が通っている

中央が冷たい・室温以下

✕加熱不足

串で刺して、出てきた肉汁が透明

◎OK

串で刺して、出てきた肉汁が赤い・濁る

△加熱不足の疑い

 

それでも判断に迷ったときの見分け方や、生焼けだった場合の再加熱方法は、こちらの記事に詳しくまとめています。

▶︎ ローストビーフは中身が生?生焼けの見分け方、再加熱の方法

 

なお、ローストビーフを含む食肉製品の規格基準として、厚生労働省は中心温度の目安を「63℃で30分以上、または75℃で1分間以上の加熱と同等以上の効力」と定めています。
家庭で作るときも、家族や小さなお子さま、高齢の方に出す場合はこの目安を意識し、温度計で中心温度を測って確認しておくと安心です。

参照:厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル

 

炊飯器・オーブン・低温調理器、それぞれの調理時間と特徴

ローストビーフを作る方法は炊飯器のほかにもいくつかあります。調理時間や仕上がりの傾向を整理しました。

観点

炊飯器

オーブン

低温調理器

加熱方式

保温モードを使用

庫内温度を設定して加熱

設定温度で湯を循環

設定温度の目安

約70〜73℃

110〜140℃で短時間

57〜60℃で長時間

加熱時間の目安

保温40〜60分

加熱30〜40分

加熱2〜3時間

休ませ時間

30〜40分

20〜30分

5〜10分

温度のコントロール

機種ごとに60〜74℃の差がある

庫内ムラが出やすい

0.1℃単位で一定に保てる

道具のコスト

家にある炊飯器で完結

家にあるオーブンで完結

専用機が必要(5,000〜20,000円)

仕上がりの傾向

ミディアムレア寄りのほどよい火入れ

中心まで火が通りやすく、大きめの塊肉も調理しやすい

全体が均一なロゼ色に

 

3つの調理器具には、それぞれ得意な場面があります。

  • 炊飯器:家にある道具で完結し、保温ボタンを押せば加熱中は手放しでよい
  • オーブン:庫内の熱で包むように加熱でき、温度を自分で設定できる。大きめの塊肉を一度に焼きたいときに向く
  • 低温調理器:加熱時間は長くなるが、温度を一定に保てるため仕上がりが安定する

作る頻度や、ほしい仕上がりに合わせて選んでみてください。精密な温度管理でしっとり仕上げたい方は、真空調理を使った本格的な方法もあります。

▶︎ お祝いや記念日に!真空調理でしっとり、ローストビーフの作り方

 

まとめ|原則を守れば、炊飯器でも安全に美味しく作れる

炊飯器でローストビーフを作るときに押さえたいポイントを、最後に整理します。

  • 4つの共通原則(表面を全面焼き/常温に戻してから保温/湯温は70〜73℃/加熱後は休ませる)を外さない
  • 炊飯器の保温温度は機種で14℃の差があるため、自宅の機種の特性を一度確認しておく
  • 「保温30分」だけを鵜呑みにせず、肉の重量と厚みに合わせて時間を調整する
  • 仕上がりに不安があるときは、肉汁の色や繊維の見え方で判定する
  • 心配なときは、温度計で中心温度を測ると確実

家にある炊飯器で、家族や大切な人に「美味しい」と言ってもらえるローストビーフを、作ってみてください。

 

 

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産地や肉質についてもっと知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

▶︎ 雪が降るほど美味しさが増す?極上のサシを持つ「尾花沢牛」とは

 

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