一番美味しいのは?低温調理ローストビーフ、加熱温度による違いを分析

一番美味しいのは?低温調理ローストビーフ、加熱温度による違いを分析

コロナ禍の「おうち時間」で注目を浴びた、低温調理器。
手順に従ってじっくり調理すれば、ご家庭でもローストビーフなどのお肉料理も作ることができるので、最近は手作りしているという方も多いのではないでしょうか。

ローストビーフを美味しく仕上げるには、低温調理がカギを握ります。
加熱しすぎるとお肉から水分が抜けてパサパサになってしまう一方、美味しさを追求するあまり加熱不足になり、殺菌が不十分なまま食べてしまうと、自分や家族の健康を脅かしかねません。

そこで今回は、ローストビーフを作る際に守りたい加熱温度(中心温度)について解説いたします。
加熱温度によるお肉の仕上がりの違いについても分析しておりますので、美味しく安全にローストビーフを食べたい!という方は最後まで必見です!

 

目次

ローストビーフの低温調理温度で気をつけるべきこと

牛肉を調理する際は、腸管出血性大腸菌O157による食中毒に十分注意が必要です。

牛肉の場合、菌は表面に付着しているのが一般的で、肉の中心部にはいないと言われています。
しかし、冷蔵保存期間が長くなり肉の熟成が進むと、菌が表面から内部に侵入し始めます。また、包丁で切れ目を入れることで、菌が内部に混入することもあるのです。

つまり、ローストビーフの内部が加熱不足だと、肉の中に潜んでいる可能性のある菌が死滅せず、食中毒を引き起こすリスクがあります。
腸管出血性大腸菌O157に感染すると、激しい腹痛や下痢、発熱、嘔吐などの症状が現れます。重症化し、最悪の場合は死に至るケースもあるのです。

食中毒菌が発育しやすい温度はおよそ 20℃〜50℃といわれています。
お肉をこの温度下に長時間置くことは、病原菌の発育を促してしまうのです。
ご家庭で調理を行う際は、食中毒菌が活発化しやすい温度は避け、必ず調理機器のマニュアルにしたがって食材を扱うようにしましょう。

参照:厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル

 

 

お肉を加熱すると固くなる?たんぱく質の仕組み

では、ローストビーフを美味しく作れる低温調理の温度を探るため、お肉のことをより深く知ってみましょう。

普段私たちが口にするお肉は、動物の筋肉が主体。
その成分は約75%が水分、20%がたんぱく質、残りは脂肪分です。

たんぱく質の大半は、筋肉の動きを司る筋繊維と、それを支える結合組織に使われています。

  • 筋繊維:主成分は「ミオシン」と「アクチン」。柔らかいたんぱく質。
  • 結合組織:筋繊維をまとめる役割を持ちます。
  • 主成分は「コラーゲン」。硬く丈夫な性質を持っています。

お肉を加熱すると

そんなお肉を加熱すると、大きく3つの変化が起こります。
①たんぱく質の変性
②水分の放出
③コラーゲンの溶解

①たんぱく質の変性
アクチンとミオシンは加熱により変性し、縮んで固くなります。

②水分の放出
たんぱく質が縮んでしまうことに伴い、肉全体も収縮。
水分の75%を占める肉は、まるで水を含んだスポンジを絞るように水分を失い、パサついた食感になってしまうのです。

③コラーゲンの溶解
一方のコラーゲンは加熱により溶けて柔らかくなる性質を持つのですが、この反応には時間を要します。
通常の調理では、コラーゲンはほとんど溶けずに固いままなのです。

つまり、加熱により、

  • 本来柔らかいたんぱく質(アクチンとミオシン)が固くなる
  • お肉の水分が失われる
  • 硬いたんぱく質(コラーゲン)が硬いまま

という現象が起きるため、お肉が固くなるというわけです。

 

柔らかいお肉に仕上げるにはどうすればいいの?

お肉を柔らかく仕上げるには、先ほどと逆接的に、

  • 柔らかいたんぱく質(アクチンとミオシン)をやわらかく保つ
  • 水分の損失を防ぐ
  • コラーゲンを柔らかくする

ことが重要です。

ここで注目したいのが、アクチンとミオシンの2つのたんぱく質。
中でもアクチンの変性が、肉のやわらかさに大きく影響します。

アクチンが変性すると:肉全体が縮み、内部の水分が肉汁として放出されてしまう
ミオシンが変性すると:生肉特有のぐにゃっとした食感から、サクッとした歯応えに変わる

ということで、お肉を美味しく仕上げるには、ミオシンのみが変性し、アクチンは変性しない状態が理想的。
ミオシンは50℃から、アクチンは66℃から変性が始まるので、50〜66℃の間の温度帯で加熱するのがポイントなのです。
お肉に水分を留めておく性質のあるアクチンが変性しない温度で加熱すれば、水分の損失を抑えることができるのですね。

そしてコラーゲンを柔らかくすることに有効なのが、低温で長時間加熱する方法。
実はコラーゲンの変性は、55℃からゆっくりと始まるのです。
反応に時間はかかりますが、じっくり加熱することで効果が期待できます。

 

調理温度による仕上がりを徹底比較!

お肉に含まれるたんぱく質の仕組みを理解したところで、いよいよ調理温度によるローストビーフの仕上がりを比較してみましょう。

3.5〜4cmの厚さの牛ヒレ肉を、50℃・55℃・60℃・65℃・70℃の温度で低温調理したローストビーフの、仕上がりを比べました。

調理方法(5種類共通)

  • お肉を常温に30分置く
  • それぞれお肉の重さの1.1%の塩と、胡椒を揉み込んで30分馴染ませる
  • お肉表面の水分を拭き取り、フリーザーバッグに入れて空気を抜く
  • 低温調理器を使用して加熱
  • オリーブオイルを熱したフライパンで、お肉の表面を強めの中火でサッと焼き、焼き色をつける


焼き上がった断面がこちらです。
写真からも、仕上がりの違いはよく伝わるのではないでしょうか。

 

温度・加熱時間

仕上がり

50℃
2時間

水分量:フリーザーバッグに出ているドリップも少なく、水分が留まっている。

柔らかさ・噛みごたえ:かなり柔らかい。脂ではなくお肉の旨味を感じられる噛みごたえ。

お肉の筋の部分:温度が低いので硬いままで噛み切れなかった。

仕上がりについての所感:レアな仕上がりだが、火は入っている。

55℃
2時間

水分量:50℃より水分が少し抜けた印象だが、十分ジューシーな食感。

柔らかさ・噛みごたえ:50℃よりも柔らかい。ミオシンが変性して肉々しい噛みごたえが少なくなり、歯切れがよく食べやすくなった。

お肉の筋の部分:50℃と比べると噛み切りやすくなっている。

仕上がりについての所感:ミディアムレアな仕上がり。お肉の旨みもしっかりと感じられ、ジューシーで柔らかい。

60℃
2時間

水分量:55℃と比べてお肉のジューシーさは減った。結構水分が出てしまった印象。

柔らかさ・噛みごたえ:お肉に火が入り締まった感じの噛みごたえが出てきたが、ミオシンの変性によって55℃よりもお肉の繊維が解けた印象。
歯切れはさらによくなった。十分に柔らかい。

お肉の筋の部分:あまり気にならないくらいの固さになった。

仕上がりについての所感:ミディアムな仕上がり。生肉特有の臭みがなくなり、あっさりと食べることができる。

65℃
1時間30分

水分量:フリーザーバッグにたくさんの水分が出た。

柔らかさ・噛みごたえ:60℃のお肉と比較して明らかに水分が抜けてしまっているが、一方で繊維はさらにほぐれていて、ほろほろとした食感。柔らかい。

お肉の筋の部分:気にならない。

仕上がりについての所感:ミディアムウェルの火の入り加減。牛臭さがなく柔らかな仕上がりになった。

70℃
1時間

水分量:温度を上げた分、加熱時間を減らしたため、65℃のお肉と同じくらいの水分量。

柔らかさ・噛みごたえ:お肉の繊維が完全にホロホロになり、柔らかい。

お肉の筋の部分:気にならない。

仕上がりについての所感:ウェルダンの少し手前、という火の入り具合。
お肉の厚みを考えると、水分はかなり留まり柔らかい仕上がりなのではないか。

 

お肉の火の通り加減は好みが分かれるところかと思いますが、こちらの実験結果もよければ参考にしてみてくださいね。

※調理時間は、お肉の厚さに応じて、必ず調理機器のマニュアルにしたがって調整するようにしましょう。

 

57度の低温調理でうっとりする口溶け。和牛シャリアピンギフト専門店YU-SETSUのご紹介

本記事では、お肉を構成するたんぱく質の仕組みと、低温調理の加熱温度による比較実験の結果をお伝えいたしました。
温度によってお肉の仕上がりがどんな風に変わっていくのか、イメージが湧きましたか?

和牛シャリアピンギフト専門店YU-SETSUは、きめ細やかなサシと粉雪のようなくちどけが特徴の、雪降り和牛尾花沢のローストをご提供しているオンラインショップです。

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使用しているお肉は、厳しい気候の中で栄養たっぷりに育った山形県産のブランド牛・雪降り和牛尾花沢
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まとめ

科学の力でお肉を柔らかくし、旨みを閉じ込める低温調理。
とても奥が深い調理法ですね。

美味しいお肉を味わいたい!という方には、ぜひ食材のプロが手掛ける低温調理の和牛ローストをご堪能いただきたいと思います。

和牛シャリアピンギフト専門店YU-SETSUでは、寒暖差の厳しい尾花沢の自然を乗り越えた雪降り和牛のローストや、柔らかくジューシーで、オレイン酸を多く含むヘルシーなデュロック豚のローストポークを購入することができます。

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